カンボジアで働いている人の備忘録

24歳、なんかカンボジアで起業したみたいです(他人事)

なぜかやたらと嫌われる後輩を見てて思ったこと

「いちいち腹立つんだよな、あいつ」

ある日の昼休み。横目でちらりと後輩くんに目をやりながら、先輩は小声でつぶやいた。怒りの矛先を向けられている張本人はそんなこともつゆ知らず、遠くの自席でもくもくとパンを食べつつスマホをいじり続けていた。

「あいつ、何かやらかしたんすか」

少し呆れて笑いつつ、私は先輩に合わせて小声で尋ねる。入社して1年目の新人なのによくもまぁここまで言われるもんだな、と他人事のように思いながら。先輩は入社1年目の後輩くんを教育しながら実務に当たっている。世間でいうところのOJTの最中の出来事だった。

先輩は眉間にシワを寄せ、やや首をかしげつつカップラーメンをすすり続けている。私が尋ねた「何か」を記憶から掘り起こそうとしているようだった。しかし彼が麺をスープで一息に飲み下した後も、険しい顔のままだった。ふしゅー、と大きく鼻で呼吸をし、先輩はこう続ける。

「うーん、あれなんだよ。コレっていうのがあったワケじゃないんだよなぁ...

先輩はどこか腑に落ちない様子だった。どうやら怒りの原因に心あたりがないらしい。熱しすぎた胸を冷やすかのように、今度はミネラルウォーターをごくごくと飲み始める。

「色々やらかし過ぎてて、思い出せないとか。ミスの量がハンパないんですか、あいつ」

はは、と冗談ぽく笑いながら返す。私も去年こんなことを陰で言われてたんだろうな、と思いながら。後輩くんは入社1年目、つまり去年の私と同じだ。新人への文句なんぞ、積極性がないとか、同じミスをするとか、質問が下手とか、そんなとこだろう。後輩くんの気持ちはよく分かる。

ふう、と一息ついて先輩はボトルをデスクに置く。

「まぁ、ミスが多いのは別にいいよ。1年目だし。だけどなんていうか、細かいところでやたらとイライラさせられるんだよな」

「え、仕事ができないってワケじゃなくてですか。細かいところって?」

予想していた答えと違うものだった。こいつは使えない、だから腹立つ。そういうシンプルな話だと私は思っていた。

「イラっとするのはな、あいつが『ここ教えてください』って質問しにきた時だな」

「質問?」

「まぁ分からないのは当たり前だし、俺が答えるのは全く構わないんだが」

「イライラするポイントが見つからないんですが」

「そうだろ?んで腹立つのはさ。俺が質問に教えると、あいつは早口で『んなるほどなるほどなるほど』ってちょっと高い声でつぶやくんだ。これがもうめちゃくちゃ腹立つんだよ、もう。しかもあいつ、理解してなくても『なるほど』って言うんだ」

くだらない内容を先輩が熱っぽく語る。しかし 本当にイラついているんだということが伝わって来る。どこかスイッチが入ってのか、先輩はさらにまくしたてる。

「そうだ、あとはな。飲み会でも全く動かないだろ、あいつ。お前らばっかり動いてて、あいつ食べてるだけじゃないか。お前も注意しろよ。先輩にやらせるのはダメだろ」

やばい、こっちにちょっと矛先が向いた。

「まぁ、あいつ1年目ですし...この間まで学生だったら、しょうがないすよ。僕らもそうでしたし」

「それにしてもだよ。話しかけても『はい』しか言わないし、冗談通じないし。あと笑っちゃいけないタイミングで笑うし」

「笑っちゃいけない時に笑う?それは、ちょっと気持ちわかります。スベったときとか」

「あいつのはタイプが違うんだよ」

吐き捨てるように先輩は言った。そして少し考え込んだあと、言葉を続ける。

「そうだなぁ。あのさ、俺太ってるだろ」

「太ってますね」

「そうだろ。んで、そこそこ仲良いやつが、俺をデブでいじったとする」

「よくやられてますね」

「でまぁ、ウケるからいいんだよ。笑われるのは。実際面白いし。けど、そこであいつも笑ってんだよ。お前が笑うのは、違うだろ!ってなってさ、腹立つんだよなぁ。しかも乗っかってイジってくるし」

なんというか、人に一度嫌われると全てが減点方式になるんだなぁと思った。恐ろしい。新人くんにまったく非がないとは思わないけど。

他人との距離の測り方ってすごく難しい。コレ!っていう正解もないし、誰かのマネでどうにかなるもんでもない。大人になったら誰も教えてくれないし。私自身、人付き合いがすごく苦手だ。友達いっぱいのリア充には程遠い。後輩くんのことも他人事じゃないなぁ。